この記事のタイトルを見たとき、私は「高校生のうちから公認会計士の勉強を始め、大学生のうちに登録を済ませるような先進的なカリキュラムを組んでいるのでは?」と期待しました。
しかし、実際の内容は「職業紹介レベルの授業」と「希望者のみを対象とした日商簿記3級・2級の大原講座」というもので、正直、肩透かしを食らいました。
講座の実態
記事によると、簿記講座は以下のような流れで実施されているようです。
- 10月:高1全員対象の「簿記・会計学ガイダンス」
- 明治大学経理研究所の先生+公認会計士試験合格のOB大学生2人が講演
- 11月:希望者130人が明治大学和泉キャンパスで「簿記3級体験授業」に参加
- 12月~翌年2月:「資格の大原 東京水道橋校」で3級・2級講座(全17回)
- 高2・高3含む72人が参加
合格実績
- 簿記3級:78人中34人合格(合格率 約44%)
- 簿記2級:33人中13人合格(合格率 約39%)
【参考】
- 日商簿記3級(統一試験):2025年2月 合格率28.7%
- 日商簿記2級(統一試験):2025年2月 合格率20.9%
- 過去10回の平均:3級 約36.4%、2級 約21.8%
- ネット試験(CBT):3級 38〜41%、2級 約35.7%
明大中野の実績は評価すべきか?
確かに、普通科の高校生が大学生・社会人や商業高校生と同じ試験で全国平均を上回る合格率を出している点は評価できます。特に2級で約4割の合格率は立派です。
しかし「全17回の大原講座に通った成果」としては、やや物足りなさを感じました。偏差値の高い明大中野の生徒であれば、3級は過半数が合格してもおかしくないと感じます。
合格率が50%を切っている理由としては、
- 授業を受け身で聞いているだけで、十分な問題演習を積めていない
- 定期試験、部活、バイトに追われ、勉強時間の確保が難しい
- ゲーム・SNS・動画などの誘惑に打ち勝てない
といった現実があるのでしょう。
この結果から、簿記の合否は「学力」よりも「主体的に取り組む姿勢」に左右されると改めて感じました。
実は「資格の大原」の営業戦略?
この記事は明大中野の教育実践を紹介する体裁をとっていますが、実質的には資格の大原の営業活動の一環なのだと思います。
近年、以下のような要因により、大原のような資格予備校の立場は厳しくなってきています:
- CPAラーニングのような無料の簿記学習サイト
- YouTubeの無料でわかりやすい解説動画
- 書店に並ぶ良質なテキスト・問題集・模試
さらに、大学の経済・経営・商学部や商業高校の学生数は少子化で減少傾向にあり、これまでの「顧客層」が縮小しているのです。
その中で、大原はエスカレーター式で進学する大学付属校の高校生をターゲットにした営業戦略に舵を切ったように見えます。
今後への期待
簿記は、どんな仕事に就いても役立つ基礎スキルであり、こうした取り組みが公認会計士という職業の認知度を高める点では非常に意義があります。
ただ、私はもっと踏み込んだ高大連携が可能ではないかと考えています。
たとえば早慶・MARCHの付属校であれば、
- 高校生のうちに会計士短答式合格
- 大学生の間に論文式合格・登録
- 学内バイトとして時給2500〜3000円の実務体験
といったモデルを実現できるはずです。
「うちの学校は高校から公認会計士を養成しています。大学生になる頃にはすでに高収入バイトをしていますよ」というブランディングができれば、教育界も会計士業界も盛り上がるはずです。